秋、特に山の秋はあっという間に過ぎていく。夏の暑さでうっかりぼーっとしていると、気が付いたら秋が終わっていたこともあり、夏の終わりに計画を立てた。目的地は以前、家族で訪れたこともある八ヶ岳・白駒池。紅葉の時期に行ってみたい!という私の思いに、友人2人が快くのっかってくれた。紅葉の時期は大混雑な白駒池、おまけに紅葉のピークもなかなか予想ができない中で、友人が片道4時間!の運転をかってでてくれたお陰で、平日日帰りでどうにか行くことができた。
朝6時に出発し麦草峠に到着をしたのが10時前。道中、濃霧が立ち込めていたけれど2000mほどの麦草峠では霧はすっかりなくなっていた。麦草峠から歩きはじめると、突然視界が開ける不思議な場所へ出た。「白駒の奥庭」と呼ばれる場所で、季節にはシャクナゲが咲く群生地のようで、周囲は樹林帯であるのでここだけぽっかりと開けた空間がまさに「奥庭」だ。
白駒池へクは麦草峠駐車場から1時間かからずに歩け、苔むした神秘的な森の中を整備された木道に沿って歩くことができる。歳をとって、例え山登りはできなくなってもこうした所を「歩く」楽しみはあると思うと、何だかとても安心できる。と、同時に、やはり歩ける体でいられるようにいたいと強く思った。
今回の目的の一つは、少し登ったところにある高見石小屋で名物の”揚げパン”を食べることもあったので、池を周る前に高見石を目指した。進むにつれ深くなる苔の森を堪能しながら、ゆっくりと上っていく。ここに来ると苔というミクロの世界に引きこまれ、その種類の多様さとイキイキとした姿に驚くばかりだ。ひとしきり感動していると、あっという間に高見石小屋に到着し、まずは高見石からの眺めを拝むことに。巨大な岩を必死によじ登った先に待っていたのは、樹林帯の中にぽつんとある白駒池とその背後に広がる真っ白な雲、青い空だった。よじ登ってきた大きな岩も、一瞬にして小さな存在へと変えてしまうその景色に圧倒される。見方によって変わるこの感覚は、山へ登るということの恩恵のひとつだと思う。
さて、お待ちかねのごはんタイム。無事くに揚げパンも買え、丸太を囲んでゆっくりと過ごした。その後、岩だらけの道を下り、白駒池の周りを木道沿いに歩く。池の周囲は、特に苔の緑が濃く、巨大な岩を木の根っこが包み込むように広がっており、さらに根っこの下には所々に暗い洞窟のような空間がある。”なにか”が存在するような「もののけの森」だ。
もののけの森に囲まれた白駒池は、紅葉のピークは過ぎていたものの、そこにはただただ静かで穏やかな時間が流れており、水面を眺めているだけで心が落ち着いていった。こうした穏やかな水面の下には、きっと澄んだクリアな世界が広がっているのだろうなぁと思う。こんな水面のような心でありたい。
今回、一緒にいった友人たちはお互いに面識はあるものの、3人で会うのは初めてだった。ただ、私の中の何かが働いて「一緒に山へ行ってみたい」と感じ、躊躇なく誘っていた。若い私であったら、遠慮や様々な考えがよぎりきっとこんな誘い方はできなかったと思うが、今の私にはできた。会いたい人に会い、行きたい所へ行く、とてもシンプルだ。山道を歩きながら、帰りの車内で皆でチェッカーズを口ずさみながら、「誘ってよかった」とニンマリした。
麦草峠駐車場▶白駒の奥庭▶白駒池▶高見石(高見石小屋)▶白駒池▶白駒の奥庭▶麦草峠駐車場
山ごはん:おにぎり、鶏スープ、揚げパン、珈琲、お菓子いろいろ
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